<伊藤 隆仁>

初めまして伊藤隆仁です。

今回、初めて書かせていただくことになりました。
伊藤隆仁なんて、バレエ団にいたっけ?と、思っている方も、たくさんおられることだとは思いますが、そういう人間も希にいるのだと思ってください。せっかくこういう機会を頂いたので、自分なりのアプローチで三銃士のことを書かせて頂こうかなと思います。

三銃士のタイトルを初めて目にしたのは、十代の半ば頃でした。当時通っていたバレエ教室に、ある日、三銃士というタイトルの大きなポスターが貼られていたのです。第一印象は驚きでした。当時、私のバレエの知識には「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」といった多くの人が知る作品しかありませんので、そういうバレエもあるんだと驚いたものです。その次に感じたのがワクワク感です。当時の私には、三銃士という物語の知識もありません。ポスターの雰囲気で、くるみ割人形とねずみの王様との戦いみたいなシーンを想像しました。当時の私にはそれだけで充分だったのです。見てみたい。ところが、舞台の場所は東京でした。大阪に住んでいた私にとっては大きな壁であり、見に行くことはできなかったのです。
その想いは、数年後に当初とは違った形で叶えられました。上京してバレエ団に入った年の冬に、三銃士の舞台に立つことができたのです。そして、想像していたものを遥かに超える舞台を目の当たりにしました。それは、衝撃と言っても過言ではないものだったのです。

三銃士は魅力のある作品です。物語を織りなす多くの個性的なメインキャスト。テンポの早いシーン転換。ダイナミックなファイティングシーン。簡単に挙げればそういうところだと思います。今回は、さらなる魅力をみなさんにアプローチしたいと思います。
三銃士には、メインキャスト以外にも多くのキャストがいます。それぞれが、シーンの中では役割を持っています。シーンの雰囲気だったり、メインキャストの個性の補完です。
私自身を例に取ると、主要なところでは、ロバと酒場の主人をやらせていただきます。ロバであればダルタニアンですし、酒場の主人であればミレディですが、それぞれの個性を引き出すアイテムになっています。

 

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 私が三銃士と出会ってから20年近くの時が流れましたが、作品は色あせることなく、ダンサーたちの切磋琢磨によって、より深く熟成されてきました。
三銃士は楽しい作品です。今までバレエを見たことがなかった人たちでも楽しめます。今までバレエに興味のなかった家族と一緒にきてください。きっと、私が20年ほど前に味わった衝撃を味わうことができると思います。