.......それにしても、ヒラリオンは、こんなふうに踊り殺されなければならないほどの罪を犯したのだろうか.......
たしかにガサツで、強引で、何よりみんなの前でアルブレヒトの身分を明かした行為は
あまりにデリカシーに欠けていた。
けれども、その根本にはジゼルへの純粋な愛があったはずで.......
すべての男性を恨むウィリたちに捕まったのが運の尽きか.......
いや、しかし、ジゼルはアルブレヒトのことは助けるのに.......
自分がアルブレヒトを愛するのと同じように、自分を愛してくれた人を助けないなんて.......
ああ.....なんて不憫なヒラリオン........
こんばんは。
本日のダイアリーは、通し稽古を重ねるたびに膨らんでゆくヒラリオンへの同情を封印しつつウィリ役に臨む、
竹石玲奈がお送りいたします。
登場人物の心情やドラマの背景をあれこれ想像し、自分なりに解釈するのは楽しいものですよね。
クラシックバレエは、物語や音楽に大きな違いがないにも関わらず、同じ演目が長い間人々に愛されつづけています。
その理由は、演目の完成度もさることながら、バレエ団の解釈、踊り手の解釈、そして受け手の解釈によって、それぞれの個性がかけ合わさり、魅力が広がっていくところに醍醐味があるからではないでしょうか。
ジゼルの恋人役であるアルブレヒトは、数あるクラシックバレエの登場人物の中でも、解釈や演じ方による性格の振り幅が広く、また、それの与える影響が大きいキャラクターであるように思います。
婚約者がいる貴族の身でありながら、村人に変装して、ジゼルとお付き合いするアルブレヒト。
いけないこととわかっていながらも、あまりに魅力的なジゼルに、つい夢中になってしまったのか、
それとも、後先考えずに突っ走ってしまった、若気の至りだったのか、
あるいは、ただの戯れ、いわゆる浮気だったのか、
アルブレヒトの一幕の演じ方で、二幕での印象が随分変わってくるところが、このバレエの面白味のひとつだと、
これまでいろいろなジゼルを観てきて思います。
今回、アルブレヒト役は、共に初役の菊地研さんと中家正博さんが踊ります。
ジゼルの家のドアをノックする仕草ひとつから浮かび上がる、彼の"人となり"。
あなたの目には、どのように映るでしょうか。
舞台は一期一会。
ご鑑賞くださる皆様にとって、バレエ「ジゼル」が、心に残る舞台になりますよう、
そして、初めてバレエをご覧になる方にとっては、バレエの世界への素敵な出会いとなりますよう、
団員・スタッフ一同、願っております。