コールドバレエ  <杉本 直央>

ご無沙汰しております。
すっかり涼しくなっておりますが、皆様体調など崩されていませんでしょうか...


突然ですが...、
私はコールドバレエが大好きです。

入団以来、数々の作品のコールドバレエを踊らせていただきました。
一度きりのものもあれば、何度も踊ったものもありますが、毎回感じることが違いましたし、見え方も違いました。
初めの頃は、同じ衣裳を着ているにも関わらず、経験の少ない自分がそこに加わることに自信がなく、とても焦る気持ちで、なんとか足を引っ張らないように、必死だったのを覚えています。正直、一つ一つの動きの意味やその場面の感情などと向き合う余裕はありませんでした。

その後、自分より若いダンサーが増えてきて、いわゆる中堅の立場になったときには、自分がそこで出来ることを考えたりしていました。
若くてフレッシュなダンサーに負けてはいけない、でも、一緒でもいけない。経験が長い分、落ち着かなくてはいけないけれど、落ち着きすぎてもいけないだろう...、と。
沢山あるわけではありませんが、何度も経験した役を踊っていて、踊ること以外の部分に気持ちを向けられていることに気づけたとき、それまでにない喜びを感じました。

コールドバレエは、全員が一体に見えなくてはいけないけれど、それぞれの個性がないのとは違うのだというところ、また、ひとつの場面を踊るダンサーには、勿論それぞれの違った状況や感情があり、そのなかでひとつのものを創り上げるということも、とても難しいことだと思います。わたしは、そこに多くの時間と気持ちが必要だと感じております。
だからこそ、観ている方に感動を与えることができたり、時に鳥肌が立つような空気を作ることが出来るのだろうなと...。

これまで、舞台が近くなるにつれ、自分では気づかぬうちに気持ちがピリピリしていて、舞台後はその張り詰めた気持ちがふわぁーっとほどけるということを幾度となく繰り返しておりました。これは、どんなに経験が増しても変わらない部分のように思います。
時にはものすごい恐怖を感じることもありまして、緊張しすぎて涙が出たり、頭が真っ白になったこともありました。自分の中にある集中力と気持ちの余裕を、つかいきってしまっていたのでしょうか...

それらも含め、舞台に立つことから、このような経験をしてこられたことを心より幸せに思っております。


先日の『ジゼル』に続き、次に上演される『白鳥の湖』も、コールドバレエが見所のひとつである作品だと思います。
どうか、沢山の想いが詰まった舞台のなかに、コールドバレエの醍醐味を味わっていただけますように...

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このところの私の記事がプライベートなことばかりでしたが、今回は改めてバレエについてを考え、書かせていただきました。文章にするのはとても難しく、思っていることをうまく表現できているか...という部分もありますが。
沢山の方に、バレエの素晴らしさが伝わりますようにと心を込めました!

それでは、ありがとうございました。

杉本直央