ウィリ  <織山 万梨子>

こんばんは、織山万梨子です。

個人的な話になりますが...
私が人生で観た中で一番衝撃を受けた舞台は、2005年にNew Yorkで上演されたディアナ・ヴィシニョーワさん主演のABTのジゼルです。


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当時私はアメリカに留学していたのですが、恵まれた容姿の外国人たちに囲まれ、日本人である自分の体型や国民性にコンプレックスを抱え日々踊っていました。
実際にバレエのクラスの先生にも「あなたの踊りや努力は評価するが、あなたはバレエをやるべきではない骨格をしているので今後について考えるべき」と成績表にも書かれていて...
コンテンポラリーやキャラクターなどのクラスの評価は高かったので、自分はコンテンポラリーを中心に踊っていくべきなのかと考えていました。

その思いを抱えながら観たこのジゼル。
「ジゼル」という作品が身体を使って表現する芸術の最高峰なのだということを改めて確認し、本当にショックを受けました。
2幕の後半は目に涙が溢れていましたが、まばたきするのも惜しくて、涙を流したまま観ていました。
その後劇場が揺れる程の拍手と歓声が沸き起こりました。

クラシック・バレエの素晴らしさに心撃たれ、ハンデを抱えてでもバレエを頑張っていこうと決意するキッカケとなった公演でした。


長くなってしまいましたが、今回私が踊らせていただく役のひとつである第2幕のウィリについて少し...
第2幕の冒頭、ウィリたちが登場する場面はコールド・バレエの見せ所でもあります。
このパートでバレエ団の実力が分かると言われています。
また、(解釈は皆さまの個々の見解によりますが)振り付け一つ一つにきちんと意味があります。

例えば、ウィリたちが胸の前で両腕を組むポーズは、彼女らが婚前に死んだことを意味しています。
また、全員で片膝をついて腕を前後に動かしながら上体を反らせる動きは冒頭を含め3回出てきますが、3回目は朝の訪れとともにウィリ達が弱ってしまうという表現として、それまでのものに比べて動きがゆっくりとなります。


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今回のジゼル公演日には会場ロビーにてミニ・ワークショップが開演1時間前から開催され、マイムやステップの解説などもします。
会場にいらっしゃるお客様には、そちらのワークショップを参考にして頂くとより楽しんで観て頂けると思います。


バレエという手段を用いて、精霊であるウィリを表現するために人間である私たちは汗をしたたらせ、一生懸命リハーサルに励んでいます。
皆さまに感動していただける舞台となりますように。


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