ちょっと長話 〈竹石 玲奈〉

台風です。


ものすごい雨風の音をBGMにこのブログを書いております。


本日の担当、竹石玲奈です。


皆様ご無事でいらっしゃいますでしょうか?
お見舞い申し上げます。



台風の日には、決まって映画「The Sound of Music」の"My Favorite Things"
が頭の中を流れます。
劇中で、雷を怖がる子供たちを元気づけようと、マリア先生が歌う...
そう、「そうだ 京都 行こう。」でも有名な、あの曲です。


そういえば、バレエ団の朝のクラスでも、悪天候の日はピアニストさんがこの曲を弾いてくださることがあります。
なんとなくどんよりとした気分が一転、グッとテンションが上がることもしばしば。
ピアニストさんの素敵な選曲には、いつも心温まります。




テンションが上がる曲といえば。




「白鳥の湖」第3幕 幕開きの、入場の曲


儀典長が、ジークフリード王子の花嫁候補である
ハンガリー、スペイン、イタリア、フランス、ロシア、ポーランド
の各国の姫とそのお供たちを迎え入れるシーンのこの曲は、
なぜでしょう、異常に血が騒ぎます。

今まで3幕には何度かロシアの貴族役で出演していますが、
入場というシチュエーションにしては気持ちが高まりすぎでは...と、毎度心配になるほど。

2幕からの役替わりでどんなにバタバタしても、行進曲風のこの曲が流れると、

"我が国の姫が一番!いざ、行くぞ!"

なモードに切り替わるのです。

大げさではありません。

本当です。

それだけ音楽の与える効果は大きいということです。



「白鳥の湖」は、白鳥が登場する2・4幕の印象から、しっとりとしたイメージの強い演目かもしれませんが、
1幕と3幕、特に舞台を湖のほとりから城の広間へと移した3幕は、
セットや衣裳がガラッと煌びやかになり、クラシックバレエの豪華絢爛っぷりを堪能できます。

抜粋して踊られることも多い"黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ"も3幕ですしね。


踊れや踊れの3幕ですが、

では、この次から次へと出てきては民族舞踊らしき踊りを踊るこの人たちはいったい何者なのか。

もう少しお話ししようと思います。



先ほどの"アガる"入場曲の最後に登場し、一番手に踊るのが、パ・ド・カトル。
この男女二組は、王子の友人です。


4人の華麗な踊りで舞踏会が一気に熱を帯びたところで、
そこからは、ディヴェルテスマンとも呼ばれる各国の姫のお供たちによる、キャラクターダンス合戦が始まります。

このお供たちは、いわば姫の応援団的なポジションです。


ハンガリーのチャルダッシュ。
スペインのスパニッシュ。
イタリアのナポリ。
ポーランドのマズルカ。


それぞれの国のダンスで、舞踏会を盛り上げるだけでなく、王子や王妃を楽しませ、
姫の結婚を後押しするという意味もあるのです。



あれ?
姫は6人いるのに、ディヴェルテスマンは4種類しかないじゃないか、と思われた方

ご安心ください。

フランスとロシアの姫は、お付きの貴族がどっしりと腰を据えて見守っています。


各国のお供たちは、その後の姫たちによる求婚の踊りの中で、姫が一人ずつ王子と踊るときも、
進み出て「ぜひ我が国の姫を!」と、アピールしています。
王子に注がれる威圧感のようなものが、客席にも伝わってくるかもしれません。


今回、マズルカとして出演する三幕。
"余興"の要素が注目されやすいディヴェルテスマンの役ですが、
踊りはもちろんのこと、場面をつくるひとつのピースとして、シーンに厚みを出せたらいいな、と思います。




3幕のお話しはここまで。


ここからは完全に余談ですので、どうぞ思いっきり読みとばしてください。


「白鳥の湖」のなかで、いけないとわかっていながら、どうしてもウキウキしてしまう曲


それは


2幕のコーダ。


どうしても笑顔で踊りたくなってしまいます。



以上、
音楽で気分って変わりますよねー、
というお話でした。



あれ、いつの間にか晴れ間が.......