てれんぱれん  <竹石 玲奈>

それは、今年9月の「くるみ割り人形」公演のリハーサル中の出来事。


「てれんぱれんしてみえるよね。」


兵隊の行進の練習をしていて、私が発したその台詞にキョトンとする面々。


「え!?てれんぱれんって言わない?いやいや、ちゃらんぽらんじゃなくてさ.....あれ.....もしかしてこれって.......」


リハーサルが終わるなり事務所へとんでいって九州出身の鷲崎氏に訊ねると、やはり九州の方言だ、とのことで。




ご参考までに

【てれんぱれん】とは


私自身しょっちゅう言われていること、簡単に説明できるだろうと思っていましたが
いざ説明するとなると、これが意外に難しいものですね。

方言の中には、そのことばでしか言い表せないニュアンスを持つものがあります。
この「てれんぱれん」が、まさにそれ。


「てれんぱれん」は、「てれんぱれん」なのですよ。


それでもあえて共通語に変換すると、

"やる気がない・テキパキしていない・もたもたしている・だらだらしている様子"

そんなところでしょうか。




私が九州のことばが話せるのは、両親が九州出身だからです。


我が家では、共通語をベースに、鹿児島・宮崎・熊本・長崎・福岡・大分の方言が入り混じり、もはや何弁とも分類し難い、「竹石弁」を話しています。

そのような環境で育ちましたので、今回の「てれんぱれん」のように、共通語だと思い込んで使った(というよりも意識さえしていない)ことばが通じない、というような珍事がしばしば起こるのです。



良い機会だと思い、「竹石弁」についてあらためて考えてみました。

私はこの「竹石弁」、けっこう気に入っています。

「竹石弁」は、両親がお互いのバックグラウンドを守りつつ自分たちの感覚に合うことばを取り入れてつくってきたものであり、そしてそれは私のアイデンティティでもあり。

なかなかおもしろいな、と思います。


近年よく耳にするようになった「方言女子」という呼び方からも感じられるように、世の中の方言に対する見方が好意的になっている一方で、昔ながらの方言は失われつつあるという話も聞きます。

私の両親の世代でさえ、ひとつ上の代、つまり祖父母の世代が話す方言がわからないことがあるらしく、せっかくの豊かな文化がもったいない、そんな寂しさを覚えます。



それはことばに限らず。

文化は、時代とともに移りゆきます。
だからこそ、先人への敬意を心に留め、文化を愛し、継承すべきところ、新しく取り入れるべきところを見極めつつ、しなやかに受け継いでいきたいものです。




ここでお気に入りの方言をいくつかご紹介しましょう。

※注 ()内の県名はおおよそのものです。
地域差が大きいため、同じ県内であっても使うところと使わないところがあります。


・よか(ほぼ九州全域).....よい・いらないなど

会話の流れによって肯定否定どちらにも使える便利なことば。


・ずんだれた(ほぼ九州全域).....だらしない

「そんげんずんだれた格好ばして(そんなだらしない格好をして)」と、祖父から言われます。

少しだけ弁解しますと、祖父はちょっと外出する時でもネクタイにジャケットに革靴といった具合に身なりを整えますので、Tシャツにジーンズにスニーカーで出かける私のことがだらしなく見えるのではないかと。


・わっぜびんたくらい(鹿児島).....とても頭にきた

まるでドイツ語かフランス語かという響きです。


・うーばんぎゃあ(熊本).....大雑把

これも外国語に聞こえます。


・いん(鹿児島・宮崎).....犬

写真は時任友興さんデザイン宮崎西諸弁Tシャツです
「いん」に関しては、ことばそのものというよりも、このイラストが気に入っているのかもしれません。



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今日はバレエの話じゃなかったとばってん、「てれんぱれん」の話はどげんやったでしょか?
おもしろかことばやけん、あーたがたも使うてみならんですか?

いきなり寒うなってきたけんが風邪ばひかんごと気ぃばつけてさ、今週もがんばらんばね!



たけいっ(竹石)ぐゎした。