出待ち.....劇場、放送局、スタジアムなどの出入り口で、ファンが目当ての芸能人や有名選手などが出てくるのを待っていること(デジタル大辞典より)
私は、かつて一度だけ、出待ちをしたことがあります。
こんなバレエ観たことない!
こんな世界があったのか!
すごい!
すごい!!
すごい!!!
衝撃と興奮が醒めやらぬまま、
私と織山万梨子ちゃんは、ステージからの熱気に背中を押され、
"あの"ダンサーのサインを今日こそ絶対にゲットするのだ!
と意を決し、楽屋口に駆けつけました。
気づけば、1時間以上。
ほとんどの出演者が私たちの前を通り過ぎて行きました。
もしかしたら見逃しちゃったのかもしれない.......
諦めかけた頃に現れたのは、当時ワークショップでお世話になっていた
ピョートル・ナデリ先生でした。
先生は、プログラムとサインペンを握りしめた私を見つけると、にっこり笑って、
後に続く方々に声をおかけになりました。
ローラン・プティさんも、サインや握手をしてくださいました。
見上げるほど大きな身体。
温かい手。
お洒落なサイン。
とびっきりチャーミングな笑顔。
こんなにかっこいいおじいちゃんがいるなんて。
まさに夢のようなひと時。
けれども残念なことに、私のお目当てのダンサーは、その輪の中にもいらっしゃいませんでした。
せっかくここまで待ったのだから、もう少しだけ粘ろう。
そう思った矢先、
「さあ、これで十分でしょう。もう遅いから帰りなさい。また明日ね。」
先生にこうも満足げに手を振られてしまっては、お礼を言うのが精一杯。
宙ぶらりんの心を抱えて、Bunkamuraを後にしたのでした。
「ノートルダム・ド・パリ」
幕が開いた瞬間虜になったこの作品に、
将来自分が出演することになるとは想像さえしなかった
13年前のお話です。