舞い散る花びらに思う <竹石 玲奈>



舞台であれ音楽であれ、その作品に初めて触れたときに受けた衝撃というのは、大なり小なり、思っている以上に残り続けるものだなあ


最近、そんなことをよく考えます。



それは「ライモンダ」においても然り。






私の初めての「ライモンダ」は、笠木啓子バレエ研究所の発表会。


ゲストでおみえになった牧阿佐美バレエ団の川口ゆり子先生と今村博明先生が踊られた「ライモンダ」のグラン・パ・ド・ドゥを、自らの初舞台を終え、客席から観ました。



発表会のあと、友達や上級生たちがキトリの真似をして盛り上がっている中で、私だけ

手を1回叩いては片手を頭に、
もう片方を腰にあてる

という奇妙な動作を繰り返していたそうです。



何をしているのだろう、と見ていた両親。



それが「ライモンダ」のヴァリエーションを模したものだと気づくまでには、かなりの時間がかかったとか。



当時の私は3才。



記憶らしい記憶はありませんから、これは後に聞いた話なのですが。



手を叩く振付けとあの独特のポーズは、きっと幼い私の目にも鮮やかな光を映したのでしょう。



よほど気に入ったのか。

発表会のビデオの擦り切れた映像が、「ライモンダ」のグラン・パ・ド・ドゥの部分ばかり繰り返し観たことをはっきりと物語っています。






以来、いろいろな方が踊る「ライモンダ」を観てきました。


どれも素敵で、それぞれのダンサーの解釈はうなづけるものばかり。


それでもやはり、
川口ゆり子先生の、気高く粋でカッコよいライモンダ

今村博明先生の、凛々しく端正で優しい騎士ジャン・ド・ブリエンヌこそが、
私の「ライモンダ」だ、と


同じ演目を観るたびに、その感覚は輪郭を濃くしていくように思います。


もっといえば、いつの間にか手にしていた"ものさし"のようなものなのかもしれません。




バーにぶら下がっては、

「お猿さんは高崎山に帰りなさい!」

と叱られていた私が、時を経て、今では両先生のクラスレッスンを受けています。



まったくもってご縁とは不思議なものです。






異国情緒溢れる音楽と振付け、キャラクテールダンス、コール・ド・バレエ、お衣裳。


マリウス・プティパ最後の大作「ライモンダ」は、その魅力を挙げればきりがありません。



10年ぶりにお届けするこの演目を、初めてご覧になる方にも、そうでない方にも、各々の目線でご堪能いただけますよう、一同万全のリハーサルを積んで参ります。



桜と舞台芸術。

人々を魅了する、生命の刹那の輝き。



牧阿佐美バレヱ団の「ライモンダ」が皆様にとって忘れ難いステージとなることを願って。



http://www.ambt.jp/perform.html