執事考〜元執事の独り言〜  <岡田幸治>

今回初めてホットラインに書かせていただきます岡田幸治です。

 

いよいよ くるみの本番です。

 

僕は昨年まで プロローグで 執事を20年間演じてきました。

 

牧バレエ団版の執事は、先ずゲストを丁寧にお迎えすることに始まり、パーティーでは プレゼントを決められた順番に渡す、そのプレゼントの箱を回収する、乾杯のグラス、ドロッセルマイヤーのマント、人形の出し入れ、くるみの用意...etc etcとパーティーが終わってゲストが帰るまで仕事が山積みです。

 

もちろんバレエの舞台ですから 音も全部きちっと決まっていて、なかなかの緊張を強いられる役です。

 

しかし執事がちゃんと機能するからこそ、パーティーの演出がスムーズに進行していくわけで、これはカーター版からの牧バレエ団のくるみの伝統の一つだと思っています。

 

さて この執事という職業  日本人には馴染みが薄いのですが、どうも先に書いた様な事をこなすだけの仕事ではないようです。

 

最近ではテレビドラマ「リーガルハイ」で里見浩太朗さんが演じている服部が一番イメージに近いでしょうか。

 

旦那様 奥様よりも屋敷の中の全ての事に精通し ご家族の好み もちろんゲストの好みやプライベートにまで気を配り プロとしてまさしく痒いところに手が届く心遣いをさり気なくこなす。

 

知識も豊富で  執事がいなくては家自体が成り立たない程の存在でありながら、あくまで主に仕える身というスタンスを崩さず その事に大きな誇りを持っている。そんな職業のようです。

 

外国映画などで観るウェイターやギャルソン、ホテルマン等も 同じ様に誇りを持ってお客様に接する、そんな感じですよね。

 

20年の間  演じる執事の立居振舞いに そんな香りが少しでもしたら、そう想って演ってきました。

 
今年からは後輩達が執事を演じます。そんな誇りを感じながら舞台に立ってくれたらな、なんて 勝手な先輩の思い込みがあります。

 

そして劇場に足を運んでいただくお客様にも 執事がそういう職だと頭の片隅に少しだけでも置いて観ていただけたらなと思っております。

 

パーティーが終わり 主が部屋に戻った後、大役を終えてふっと肩の力を抜く彼らの想いに ちょっと目を向けていただれば幸いです。

 

そして今年の僕は、可愛い孫のクララやフリッツに逢うのが 楽しみで楽しみで いそいそと元気にクリスマスパーティーにやってくる、そんなお爺さんを演じられたらなと、さてさて上手くいきますかどうか...。

 
出演いたしますダンサーたちのいろいろな想い入れの詰まった牧 阿佐美バレエ団のくるみ割り人形を是非是非ご覧になってくださいませ。

 

最後までありがとうございました。

 

IMG_9407.jpg