Révélation  <竹石 玲奈>


"デビュー以来前代未聞の29連勝!"



14歳のプロ棋士、藤井聡太四段の活躍は、その名前を耳にしない日がないほどの盛り上がりでしたね。


すごい中学生がいるものだなぁ、と、朝の情報番組を見るともなく見ていた私は、いつの間にか将棋の内容よりも、その所作に目を奪われていました。


勝者でありながら敗者より深く長く

「ありがとうございました」

と頭をさげる藤井四段のお辞儀の清々しさ。




将棋は【棋道】と呼ぶそうです。


将棋に限らず、柔道・剣道・茶道・華道・書道など、【道】とつくものは、その道を歩むことで生き方を追求するものだけに、どれも作法に厳しく、礼も洗練されているように思えます。



【道】という文字こそ付きませんが、バレエも非常に礼儀を重んじる芸術です。



バレエではお辞儀のことをレヴェランス(Révélation)と呼びます。


直訳すると「崇敬」「尊敬」。


我々ダンサーは、日々のレッスンやリハーサルでは、先生、ピアニストさん、一緒に踊るダンサーに。


舞台においては、劇場に足を運び、時間と空間を共にしてくださったお客様、そして指揮者やオーケストラの方々をはじめとするスタッフの皆様へ向けて、心からの感謝を込めてレヴェランスをします。



ひと際印象に残っているのは、昨年「白鳥の湖」と「飛鳥」に主演してくださったスヴェトラーナ・ルンキナさんのカーテンコールでのレヴェランスです。


役柄のままでありながら、優雅で品よく、且つプリマバレリーナの風格漂う立ち居振る舞い。


その心配りに満ちたレヴェランスからは、バレエに対する深い敬意と愛情が感じられました。


型を重んじるクラシックバレエ。
型に感情をのせることで生まれる本物の"美"を、同じステージ上で体感できる幸せに胸が熱くなり、感銘を受けたのを覚えています。



さて、先程「役柄のまま」と書きましたように、作品におけるレヴェランスは単なるお辞儀ではなく、レヴェランスまでが踊りです。


ですから、基本の型はありますが、役柄によってレヴェランスも少しずつ変わってきます。


たとえば「白鳥の湖」のオデット・オディールは、羽ばたくような腕の使い方で。


先月上演した「ドン・キホーテ」のようなスペイン風の踊りでは、腰に手を当てたり、足をトンと踏み鳴らしたり。


変わったところでは「ノートルダム・ド・パリ」や「ボレロ」。
男女共に"気をつけ"の姿勢で頭を下げます。



10月公演の「眠れる森の美女」には、オーロラ姫・フロリモンド王子はもとより、リラの精をはじめとする妖精たちやカラボス、宝石たち、ブルーバードとフロリナ王女、赤ずきんとおおかみ、白猫と長靴を履いた猫など、多くのキャラクターが登場します。


各キャラクターのレヴェランスに注目してみるのもおもしろいかもしれません。



それからもうひとつ。



「眠れる森の美女」では、踊りの中にも様々なレヴェランスを見ることができます。


貴族同士で。
フロレスタン王と王妃に向けて。
オーロラ姫に各国の王子たちが。
オーロラ姫からフロレスタン王と王妃に。
オーロラ姫のローズアダージオで。
従者が貴族に。

などなど。


そして、三幕のグラン・パ・ド・ドゥのアダージオでは、オーロラ姫とフロリモンド王子が互いにご挨拶をする振付がなされています。



貴族においては、プロローグ・1幕と、2幕・3幕では100年以上の時が流れていますから、レヴェランスの型も違います。




踊りはもちろんのこと、チャイコフスキーの豊かな音楽、豪華なお衣裳や舞台装置など見所が満載のグランバレエ「眠れる森の美女」。



古典の代表作を、お客様それぞれの目線でお楽しみいただければ幸いです。


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